「高3から本気を出せばいい」は数学では通用しない
「受験勉強は高3から本気を出せばいい」という考えが通じる科目もありますが、数学は違います。数学は積み上げ型の科目で、高1で習った内容が高2・高3の理解の前提になっています。高3になって「基礎からやり直す」羽目になる受験生の多くは、高1・高2のときに数学の基礎を後回しにし続けた結果です。
特に理系の受験生は、高3で数IIIを習いながら全体の演習も積まなければならないため、高1・高2でどれだけ土台を作れるかが高3の余裕を決定的に左右します。文系の受験生も、国公立志望であれば共通テストで数学が必要で、最低限の基礎は高2までに固めておくことが必要です。
この記事では、高1から高3まで学年別にやるべきことを時期ごとに整理します。今自分が何年生かを確認して、該当する部分から読んでみてください。
千葉大(理系)に通っている友人は「高1・高2のときに数学をちゃんとやっておくかどうかで、高3の余裕が全然違う。自分の周りで高3になってから数学でつまずいている人は、ほぼ全員高1・高2の基礎が怪しかった」と言っていました。先手を打てるかどうかが、最終的な合否に影響します。
全学年共通:数学で大切な習慣
数学の勉強で最も大切な習慣は学年を問わず共通しています。高1でも高3でも、以下の習慣を守ることが成績向上の土台になります。
毎日触れることが最も重要
数学は1日でも止めると感覚が鈍る科目です。学年に関係なく「毎日数学に触れる」という習慣が最も重要です。まとまった時間が取れない日でも、計算練習だけ・問題集の1問だけでも毎日続けることが、数学の実力を維持・向上させる唯一の方法です。
英語の単語帳を毎日開く習慣をつけるのと同じ感覚で、数学も「毎日必ず触れる科目」として位置づけましょう。
「毎日触れる」といっても、最初から長時間できる必要はありません。高1であれば15分でも構いません。まずは「毎日止めない」という継続の習慣を作ることが最初の目標です。継続できるようになってから、徐々に時間を増やしていきましょう。
解いた後の復習を徹底する
問題を解いて終わりにする受験生と、解いた後に解き直しをする受験生の差は、数ヶ月後に大きな実力差として現れます。解けなかった問題は翌日また解く、数日後にもう一度解く、というサイクルを作りましょう。
問題集の各問題に「○△×」の記録をつけておくと、どの問題を解き直せばいいかが一目でわかります。2周目は×と△の問題だけを集中して解き直すことで、効率よく実力を上げられます。
苦手分野を放置しない
数学は分野をまたいで積み上がっていく科目です。二次関数が怪しいまま三角関数に進む、確率の基礎がないまま難しい確率問題を解くといった状況が起きると、後から苦手分野に戻る時間のロスが生まれます。苦手に気づいたらその週のうちに集中して補強しましょう。
高1のスケジュール
高1の目標:授業の内容をその週のうちに固める
高1で最も大切なことは、学校の授業の内容をその週のうちに理解しておくことです。「高1の数学は受験に直結しないから後でいい」と思っている受験生が多いですが、高1で習う数I・Aの内容は数II・B・Cの前提になっています。高1の内容があいまいなまま高2・高3に進むと、後から全部やり直す羽目になります。
高1前半(4〜9月):数I・Aの基礎を固める
高1前半は数学I(数と式・二次関数・三角比・データの分析)と数学A(場合の数と確率・図形の性質)を習います。授業を受けたタイミングで教科書の例題を自力で解ける状態にしておくことが最低限の目標です。
この時期から「授業の翌日に前日習った内容の問題を1〜2問解く」という習慣をつけると、内容の定着率が大幅に上がります。15〜30分でいいので毎日数学に触れる習慣を作りましょう。
二次関数は特に重要です。グラフの形・頂点・軸・最大最小・判別式の使い方が後の分野の土台になるので、理解があいまいなまま次に進まないようにしましょう。
確率も高1のうちにしっかり固めておきたい分野です。場合の数・確率の基本・余事象のパターンを教科書レベルで理解しておくと、高2以降の難しい確率問題に対応しやすくなります。
高1後半(10〜3月):数I・A の弱点を潰しながら数II・Bの予習
高1後半は数II(三角関数・指数関数・対数関数・微分積分の基礎)に入ります。数IIは数Iより難易度が上がり、苦手意識を持ち始める受験生が増える時期です。
この時期の優先事項は「授業についていくこと」と「高1前半の弱点を潰すこと」の2つです。授業で難しいと感じた単元は放置せず、教科書の例題に戻って確認する習慣をつけましょう。
定期テストの前後は集中的に対策する時間を作りましょう。定期テストで点が取れる状態は、基礎が定着している証拠でもあります。
高1の段階ではまだ「受験」という実感が薄い時期です。でも、「毎日30分数学に触れる」という習慣だけ作っておけば、高2・高3で大きなアドバンテージになります。高1のうちに習慣化に成功するかどうかが、その後の受験勉強の土台を作ります。
高1での数学の勉強時間の目安
高1の平日は30分〜1時間程度が目安です。この時期は他の科目も含めた全体的な学習習慣を作ることが優先なので、数学だけに偏りすぎないようにしましょう。土日は少し多めに時間を取って、苦手な単元の復習に使いましょう。
高2のスケジュール
高2の目標:I・A・II・B・Cの基礎を確立する
高2は受験準備において最も重要な学年のひとつです。高3になると新しい内容(理系は数IIIなど)を習いながら全体の演習を積む必要があるため、高2のうちに数I・A・II・B・Cの基礎を固めておくことが、高3の余裕を作る前提条件です。
高2前半(4〜9月):数IIの基礎固めと参考書スタート
高2前半は数II・数Bの授業が中心になります。三角関数・指数対数・微積分など難易度の高い単元が続くため、授業で理解できないまま放置しないことが最重要です。
この時期から問題集を使った自主学習を始めましょう。授業のペースに合わせて「基礎問題精講 数学II・B・C」(旺文社)などを並行して進めるのが理想的です。授業で習った単元を問題集で確認しながら定着させる流れを作りましょう。
三角関数と微積分は計算量が多く、演習を積まないと慣れません。この時期から計算練習を毎日続ける習慣をつけましょう。
高2前半は多くの受験生が「授業が難しくなってきた」と感じ始める時期でもあります。ここで「難しいからとりあえず後回し」という習慣がつくと、後から挽回するのが非常に大変になります。難しいと感じた単元は、放置せずその週のうちに教科書に戻って確認することを徹底しましょう。
高2後半(10〜3月):本格的な受験勉強への移行
高2の秋以降は、受験を意識した勉強への切り替えが必要です。「学校の授業についていく」だけでなく、「入試に向けた実力をつける」という視点で勉強を進めましょう。
高2の秋から本格的に数学の問題集を使い始めた受験生は、入試本番まで約1年半あります。正しいペースで進めれば、基礎問題精講の完成→標準問題集→過去問演習という流れを十分に踏めます。高2の秋こそが、受験勉強を本格スタートさせる最良のタイミングです。
この時期の具体的な目標は「基礎問題精講 数学I・A」を完成させること(まだ終わっていない場合)と、「数II・B・C」も並行して進めることです。高2のうちに基礎問題精講を数I・A・II・B・Cまで一通り仕上げておけば、高3を演習・過去問中心に使えます。
また、志望校と入試形式を高2のうちに決めておくことも重要です。「文系か理系か」「どの大学・学部を目指すか」「数学の配点は」を把握することで、高3での勉強の優先順位が明確になります。
志望校が決まっていない場合も、「共通テストのみか二次試験でも使うか」「数学の配点はどのくらいか」の2点は高2のうちに確認しておきましょう。これによって、どのレベルの問題集まで仕上げる必要があるかが見えてきます。
高2での数学の勉強時間の目安
高2の平日は1〜1.5時間を数学に使うことを目標にしましょう。受験の足音が聞こえ始める時期なので、英語と数学を中心に時間を確保することが大切です。土日は2〜3時間を数学に使えると理想的です。
高2は「部活や行事と受験勉強の両立」という課題が最も大きい学年でもあります。「今日は部活で疲れたから数学は明日やる」という習慣がつくと、数学を触れない日が増えていきます。疲れた日でも10〜15分だけ問題を解く、という最低ラインを決めておくことで、習慣の連続性を保ちましょう。
高3のスケジュール
高3は学年ごとの目標というより、時期ごとにやることが細かく変わります。以下の時期ごとの内容は目安です。自分の現状や志望校によって優先順位は変わるので、「自分が今どのステップにいるか」を確認しながら読んでください。
高3春(4〜6月):基礎の最終確認と問題集仕上げ
高3の春は、高1・高2で積み上げてきた基礎を最終確認する時期です。基礎問題精講が仕上がっていない場合は、この時期に最優先で完成させましょう。
理系受験生はこの時期から数IIIの授業が本格化します。授業のペースに乗りながら「基礎問題精講 数学III」も並行して進め、夏前に数IIIの基礎を固めることを目標にしましょう。数IIIは習い始めてから演習量を積むまでに時間がかかるため、早めに基礎を固めておくことが高3夏以降の質を決めます。
文系受験生は基礎問題精講が完成していれば、「文系の数学 重要事項完全習得編」(河合出版)や共通テスト対策問題集に進みます。基礎問題精講がまだ終わっていない場合は、春のうちに最優先で完成させましょう。
高3春の時点での理想的な状態は「基礎問題精講の数I・A・II・B・Cが全問自力で解ける」です。この状態に達していれば、夏以降の演習・過去問フェーズにスムーズに移行できます。この状態に達していない場合は、春の間に基礎問題精講の完成を最優先事項にしてください。
高3夏(7〜8月):演習量を積む最大のチャンス
高3の夏休みは受験勉強のターニングポイントです。部活が終わり、まとまった勉強時間が取れる最大の機会なので、数学の演習量を大幅に増やしましょう。
文系受験生は共通テスト型の演習を週2〜3回のペースで積みながら、苦手分野を集中的に補強します。「時間を計って本番形式で解く」練習をこの時期から始めましょう。
理系受験生は数IIIの演習を中心に、標準問題集(1対1対応の演習など)を進めます。この夏に数IIIの基礎演習を集中的に積むことで、秋以降の応用・過去問演習の質が大きく変わります。
1日の数学の勉強時間は3〜4時間を目安にしましょう。他の科目とのバランスを取りながら、数学に十分な時間を確保することが大切です。
夏休みは「長期間まとまった時間を取れる最後のチャンス」です。この夏に数学の演習量を大幅に増やせるかどうかが、秋以降の実力の伸びに直結します。「夏に頑張れなかった」という受験生が秋以降に追いつくのは非常に困難です。夏休みの数学は最優先事項として位置づけましょう。
高3秋(9〜11月):過去問演習と弱点補強
高3の秋は過去問演習が本格化します。志望校の過去問を実際に時間を計りながら解いて、「どの分野が弱いか」「時間配分はどうすべきか」を分析しましょう。
過去問は「解けたかどうかの確認」ではなく「弱点の発見」のために使います。解けなかった問題の原因を分析して、該当する分野の参考書に戻って補強する往復が重要です。
共通テストの演習も秋以降は週2〜3回のペースで積みましょう。二次試験の形式と共通テストの形式は異なるため、両方の形式への慣れを並行して積む必要があります。
秋は模試が増える時期でもあります。模試の結果を「点数で一喜一憂する」のではなく「どの分野が弱いかを発見するツール」として活用しましょう。模試後の復習を徹底することが、本番までの実力向上の鍵です。
高3直前期(12月〜入試直前):共通テスト対策と最終仕上げ
12月以降は共通テストの比重が上がります。共通テスト数学は形式への慣れが得点に直結するため、この時期は週3〜4回のペースで共通テスト型の演習を続けましょう。
二次試験に向けた演習も並行して続けます。共通テスト後(1月中旬以降)は二次試験の過去問演習に集中します。入試直前まで「毎日数学に触れる」習慣を維持しましょう。
この時期は新しい問題集に手を出すより、これまでやってきた問題集の解けなかった問題を解き直すことを優先しましょう。「直前期に新しいことを始める」より「今まで積み上げたものを確実なものにする」方が得点につながります。
高3から始める場合の対策
高3から始めた場合の現実的な目標設定
高3から始めても間に合うかどうか
高3から数学の勉強を始めても、志望校と残り時間次第では十分に間に合います。共通テストのみで日東駒専・成成明学レベルを目指すなら、高3春から正しい方法で毎日続ければ十分対応できます。MARCHレベルを数学で受験するなら、高3春から始めて夏前に基礎を固めることが条件になります。
一方、旧帝大・難関国公立を目指す理系受験生が高3から数学を始める場合は、非常に厳しい状況です。高3で数IIIを習いながら、同時にI〜IICの基礎も固め直しつつ、応用演習まで積むのは時間的に困難です。こうした受験生は数学以外の科目で貢献できる部分を最大化する戦略も検討しましょう。
ただし「高3から始めても大丈夫」という言葉に甘えて先延ばしにするのは危険です。始めるなら今日から、というのが唯一の正解です。
高3から始める場合の優先順位
高3から始める場合、時間が限られているため優先順位が重要です。まず教科書レベルの基礎確認をして、基礎問題精講に入る。これを最短で完成させることが最初の目標です。
難しい問題集に手を出す余裕はないと割り切って、基礎を確実に仕上げることに集中しましょう。「基礎をしっかり仕上げた人」の方が「難しい問題集を中途半端にやった人」より、本番で安定して点が取れます。
高3から始める場合の時間配分として、春〜夏で基礎固め、夏〜秋で共通テスト対策と過去問演習、秋〜直前期で弱点補強と仕上げ、という流れを目安にしましょう。他の科目とのバランスを考えながら、数学に使える時間を現実的に計算して計画を立てることが大切です。
まとめ
学年別のやることを整理します。
高1:授業の内容をその週に固める。毎日30分〜1時間触れる習慣を作る。二次関数・確率を確実に身につける。
高2前半:数II・Bの授業についていきながら問題集で演習を積む。苦手分野は放置しない。
高2後半:基礎問題精講を数I・A・II・B・Cまで仕上げる。秋以降は受験を意識した勉強に切り替える。志望校と入試形式を決める。
高3春:基礎の最終確認。理系は数IIIの授業に並行して基礎問題精講を進める。文系は演習問題集へ。
高3夏:演習量を一気に増やす。文系は共通テスト型演習、理系は標準問題集(1対1対応の演習など)を進める。
高3秋:過去問演習と弱点補強の往復。共通テスト演習も週2〜3回積む。模試を弱点発見ツールとして活用。
高3直前期:共通テスト対策に比重を上げ、入試直前まで毎日数学に触れる習慣を維持する。新しい問題集より復習を優先。
どの学年でも共通して大切なのは「毎日触れること」「解いた後に解き直すこと」「苦手を放置しないこと」です。今日から始めましょう。
この記事を読み終えたら、今日中に「自分が今どのステップにいるか」を確認して、今日から始める1つの行動を決めてください。「基礎問題精講を1問解く」「教科書の例題を1つ確認する」など、小さな一歩でいいです。その積み重ねが、数ヶ月後の大きな差になります。
Ucollege.net | 大学受験を楽しく攻略